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16回蒲郡オレンジトライアスロン(学生選手権東海北陸・近畿地区予選)

三枝 悠

アラームよりも早く目が覚めた。外では風が唸りをあげている。競艇場に着くと、晴れ間が少し見えた。

周囲はせわしく動いている。何をそんなに焦るのだろう?時間に余裕を持って移動した。バイクの整備も万全だ。スイムは3分タイムが伸びた。ランは何があっても必ず走れる。“その瞬間”のイメージもできあがった。あとは実行するのみだ。

ウェットスーツを着て、ゴーグルとキャップを持って移動する。緑の湖面に近づくにつれて気分が高揚する。なんだか楽しくなってきた。スタートセレモニーが終わり、大音量でBzのBANZAIが響く。ナイスチョイス!

ホーンが鳴った。ペースは感覚に任せ、とりあえず前を目指す。視界は最悪。ひたすらヘッドアップ。リカバリーした腕が前の奴にぶつかる。右も左もひと・ひと・ひと。焦りが生まれる。最初のブイを曲がる頃、体が軽くなってきた。気づくと1週目を終えている。もう半分終わってしまった。俺はここまでいいペースなのか?あと半分しかこの舞台は残ってないぞ。まだまだ行ける。長方形のコースの最後の頂点を前にして、左のふくらはぎをつった。練習で経験済み、つっても泳げることはわかっている・・・が、今回はひどい。2度、3度と激しいのが襲ってくる。キックを控え、こらえながらスロープにたどり着く。

ずいぶん落ち着いたトランジッションだった。スタート前は隣にあった赤いアンカーはすでになかった。自分よりスイムの持ちタイムが速い他大の奴が近くに見えて自身が湧く。乗車もまずまずだ。

朝に唸っていた風はいまだに健在だった。直線のはるか先まで、集団がいくつも見えた。おまえら、ちゃんと勝負しやがれ!ボルテージは上がるが、つった左脚も足を引っ張り、なかなか踏めない。次に控えたランを考え、前にできた大集団を抜く時と風に向かって走る時は強引に踏み、あとは回す。前を走っていた糸原に追いついた。補給した水分が逆流してくる。今、俺は何位だ?何人抜いた?あと何人抜けばいい?ああ、もうバイクも終わっちゃう。

シューズを履き替え、いよいよラン。つっていた左脚は問題ない。「学生で50位くらい!」応援に来てくれた学連の仲間の声がした。近畿の枠は27、東海の枠は13。自分たち代替予選の選手は両方の通過ラインをクリアすることが予選突破の条件だ。実質的には近畿のラインが通過ラインになる。23人抜けば確実にインカレだ。とにかく前を抜くことだ。止まって見える輩がたくさんいる。こんなの抜くのは簡単だ。問題なのは通過ライン、27番目の奴だけだ。突然、胸が苦しくなった。抜いた奴に粘られる。前が近づいてくるスピードが落ちる。情けねえ・・・何を思おうが、苦しさは抜けない。抜けないが、慣れた。まだ抜かないと。1周目が終わった。目の前の奴が「あとふたりだぞ!」と言われていた。俺は、あと3人。だんだんひとがまばらになってきた。東海のラインはもうクリアしているから、東海の奴を抜いても意味はない。近畿、近畿だ。もう3人抜いたのか?それくらいは抜いてるだろう。「行けるだけ行けっ!」そう聞こえた。行けるだけ・・・行かなきゃいけない分はクリアしたのか?もう見込みなしなのか?すこし前に近畿の奴が見えた。「あいつを抜けばインカレだ」勝手に決めた。インカレが近づいてくる。抜いた!人生初の「予選突破」だ。最後の直線に入る。人垣の間を抜け、フィニッシュ。

とびっきり楽しく、とびっきりきついレースは終わった。正確な順位はリザルトが出るまでわからない。通ったか?行ったという情報とギリギリ入っていないという情報が入り混じる。まさに「人事を尽くして天命を待つ」

ようやく掲示されたリザルトを見る。誰が書き込んだのか、東海と近畿の通過ラインが引いてあった。近畿のラインは自分の少し上にひいてある。自分で数えても、同じところが通過ラインになった。タイム差、35秒・・・

梅雨だというのに、レースの日を境に好天が続いている。今年の予選が、クラブにとって「雨のち晴れ」でありますように。